冴える月







君は冴え冴えとした月1
遠くに彼女の歌う声が聞こえる。




+ 君は冴え冴えとした月1+

きょうも砂隠れの里は砂の混じる風が吹いていた。
我愛羅は特に任務もなく自宅にいた。
外を眺める景色はいつもと同じ、殺伐とした色のない世界だった。

木の葉くずしの計画が失敗してから三年がたっていた。
砂隠れの里は新たな風影を選抜し、里の復興に日々追われていた。
外を眺めながら我愛羅はふと、木の葉にいた忍者、うずまきナルトを思い出した。
「一人ぼっちの苦しみから救ってくれた大切な仲間…」
ナルトの言葉が頭痛を呼んだ。

あいつと俺、何が違う?
我愛羅はいまだに人々に恐れられる存在。
風影が変わってからもそれは変わらない。
むしろ、任務も減り、以前より厄介もの扱いされてるように感じた。

所詮はお気楽な里のやつの戯言。俺には関係のないことだ。
そう思いながらも、一方で誰かに必要とされ救われる日をあこがれている。

ナルトを思い出したおかげでまた不安定になった。
「くだらん」
彼はいまだに深い闇にいた。



ドンドン!
荒々しい音にが室内に響いた。誰かがドアをたたいているようだ。
だが返事もしないうちにドアがあき、ノックしただろう本人の声が聞こえてくる。
「我愛羅ーーー!いないのかーー!」
ぶっきらぼうで男勝りの話し方。我愛羅の姉、テマリだ。
我愛羅は今いた部屋から出て廊下の先にある玄関に向かう。
「あ、我愛羅、いるなら返事ぐらいしろよ…」
玄関に行くとカンクロウもいた。ゆっくり歩いて出てきた我愛羅にイライラと言う。
「何の用だ。」
そんなことは少しも気にせずに短く問うと腕を組んで立ち止まった。
答えたのはテマリだった。
「今日はバキがおごってくれるらしい。我愛羅も来なよ」
気がつくと日はかなり傾いていて、夜はすぐだった。

「あぁ…」
こういう誘いはごくたまにだがあった。
我愛羅が断らなくなったのはここ最近。
我愛羅に何か変化があったのだとテマリは思っていた。
「そうか。いこう。」
テマリはくいっと顔を動かした。
(げー。まじかよ…こいつがいると飯の味がわかんねーじゃん)
カンクロウは我愛羅に気づかれないように心の中で毒づいた。


店の前でバギは三人と待ち合わせていた。
店の名前はランプ。
最近できた、今話題の店だ。
席がなくなってると困るので、心配性のバギは早めに来て席を予約していた。

この店は料理ももちろんおいしいのだが、目玉は音楽家や踊り子などによる舞台だ。
日によって出し物は違うが、どれも芸術性の高いもので、いつも評判がいいのだ。

「来たな。今日はここで食べる。」
三人が来たところでそういって、店の壁に立てかけてあったメニューボードをポンとたたいた。
「へぇ。バキがこんなシャレた店をしってるとはね」
フン、とテマリが笑う。
「あ、ここ、来て見たかったとこじゃん!舞台が見れるんだろ?」
カンクロウは舞台に興味があるらしく喜んでいた。
我愛羅は特に興味はなかった。
「さ、中にはいるぞ」
三人はバキに促され店内に入っていった。

二階の席に案内された。
一階の舞台を見下ろす形だが良く見える。バキいわく特等席らしい。
料理を頼み、ひと段落していると、店内の明かりが暗くなった。
ざわざわしていた客たちも静かになってきた。
舞台にふんわりとした明かりがともった。どうやら出演者が出てきたようだ。
我愛羅は興味なさそうに頬杖をついて物思いにふけった。
「始まるな…最初は歌か…えーっと… …?」
バキが独り言のように言った。


 

   地平線の向こうに憧れる
     ここには何もないから
        蜃気楼を越えていく鳥に焦がれる
   


舞台はとっくに始まっていた。
我愛羅はハッとして顔を上げ、舞台に目をやった。
舞台には一人の少女が立っていた。
蜂蜜色の髪をした、自分とそう年がかわらなそうな少女だ。
なんだか、初めて色のついた人間を見た気がする。

「料理をお持ちしました」
我愛羅は料理がきてもピクリとも動かず舞台を見ていた。
「が、我愛羅…?」
テマリは声をかけて見るが、変わらず。
テマリの声が聞こえてないようだ。
「どうしたんだろうね。」
テマリたちは顔を見合わせる。
「気に入った…んだろ…歌が」
と、バギ。かすかに語尾に?マークがついている。
それにカンクロウは反論。
「まさか!我愛羅にかぎってそんなことねーじゃん?」
「…誰かと目でもあったか?…」

我愛羅にはそんな三人のやり取りは聞こえてなかった。
視覚は彼女にとらわれ、聴覚は彼女に集中する。

「アレは誰だ」
我愛羅は口だけを動かしていった。
「え?あ。あぁ。舞台の奴か?」
「…」
「… だそうだ。なんだ?気に障ったのか?我愛羅、一般人に手を…」
「…」
バギが心配そうに話してくる。だがもう彼の声は届いてなかった。

…」
我愛羅はつぶやいて確認する。

よく通る声、歌うしぐさ、何もかもが他の人間とは違って見えた。
それが不思議で、目がはなせない。



  歩く道の途中で君に逢った。 
    砂漠の色をした世界が色づいて立ち止まる。

   君さえここにいてくれたら
      もう他に必要なものなんてない






ふと彼女は視線を上げた。       
        

「−−−−−−−−−!」
そのとき我愛羅は と目が合った気がした。
なぜか目の前が真っ白になった。


「「「我愛羅!!」」」


テマリ、カンクロウ、バギが一斉に自分の名を呼んだ気がした。

でもなぜ、自分を呼んだのかまでは彼にはわからなかった。







 

ごめん(平謝り)あんまり名前変換ないね〜〜(逃)
次はラブラブするようにがんばるよ☆

我愛羅は可愛いですよね。おでこが。チュ〜したい。


























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